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INTERVIEW

障害があっても自分らしく働ける社会を目指して 就労移行ITスクール仙台・岩松代表が語る福祉×ITの可能性

就労移行ITスクール仙台岩松

はじめに

仙台市で就労移行支援事業所「就労移行ITスクール仙台」を運営する岩松代表。看護師から福祉業界へと転身し、障害のある方々の就労支援に情熱を注ぐ彼に、事業にかける想いや今後のビジョンについて詳しくお聞きしました。

看護師から福祉業界へ – 転身のきっかけ

ーまず、就労移行支援事業に関わることになったきっかけを教えてください。

「私がこの事業に携わったのは2022年11月になります。それまではずっと看護師としての仕事をしておりました。医療介護の分野では看護師という視点で取り組んできましたが、福祉という分野に非常に興味を持つようになりました。私が医療で学んだ知識やスキルを福祉業界に活かせることはないかと考え、この分野に関わるようになりました。」

人と人との関わりを最大限に – 新たなやりがい

ー看護師時代と現在のお仕事で、やりがいの違いはありますか?

「看護師時代は業務的な部分が非常に強かったです。採血や点滴といった処置は時間で決められていて、患者さんとじっくり関わる時間が限られていました。

この福祉の仕事に入ってみて、人と人との関わりを最大限に持てることに大きな違いを感じています。自分の言葉や伝えた内容が、利用者さんに直接届き、時には感謝の言葉をいただくことで、非常に大きなやりがいを感じています。

これまでの看護師の仕事も天職だと思っていましたが、現在の仕事はそれ以上のやりがいを感じています。」

利用者の8割が精神障害、ITスキルへの高いニーズ

ー実際にどのような方が利用されているのでしょうか?

「20代の方が多く、ITやパソコンスキルを習得したいという希望を持った方が中心です。障害の種類では、精神障害をお持ちの方が事業所全体の8割を占めています。そのほかにも、軽度の知的障害の方、身体障害の方、内部障害の方、難病をお持ちの方も通われています。」

未経験からエンジニアまで – 充実した訓練内容

ー具体的にはどのような訓練を提供されているのですか?

「未経験者の方でもプログラミング言語をしっかり学べるよう、当スクール独自のロードマップを作成しています。このロードマップに沿って、ウェブデザインやエンジニアを目指すためのカリキュラムを進めていただいています。

事務職を目指す方には、Excel、Wordなどのスキルはもちろん、簿記の学習を希望される方には会計関係の知識を身につけるサポートもしています。

また、『自己理解』の部分も重視しており、『自分に合った仕事は何か』『自分の強みや弱みは何か』をワークを通じて探る時間も設けています。

我々のITスクールでは、学んだ言語が自分に合わないと感じることも大切な気づきとして歓迎しています。ITスクールでの学びを通して自分の得意不得意を知り、可能性を広げていってほしいという思いで運営しています。」

意外にも事務職への就職が最多

ー実際にどのような企業に就職されることが多いのですか?

「ITスクールというと、IT関係の就職が多いというイメージをお持ちかもしれませんが、実際は事務職への就職が最も多くなっています。

求められるスキルとしては、Excel、Word、PowerPointなどのオフィスソフトや、Googleスプレッドシートなどの操作スキル、情報データをまとめる能力が重要です。

当スクールでは、MOS資格取得のサポートに加えて、『事務実践部』という活動も用意しています。ここでは実際の業務に近い形で、データ入力、チェック、修正など、より実践的なスキルを身につけられる機会を提供しています。」

涙の内定獲得 – 10ヶ月の就職活動を支えて

ー利用者さんとの印象深いエピソードがあれば教えてください。

「事務職への就職を目指していた方で、10ヶ月もの間、応募しては不採用という状況が続いていた方がいました。その方から『もう事務職を諦めたい』『本当にITスクールで就職できるのだろうか』という声を何度か聞きました。

そのたびに私は、応募状況のデータを分析し、改善方法を一緒に考え、時には就職活動を一時休止してリフレッシュする期間を設けるなど、様々な角度からサポートを続けました。

そして10ヶ月目にようやく上場企業から内定をいただいたときのことです。その方は涙を流しながら私に握手を求め、『今までお世話になりました』『色々ご迷惑をかけましたが』と感謝の気持ちを伝えてくれました。

その後の定着支援でお会いするたびに、『岩松さんがどんなことも受け止めて向き合ってくれたおかげで今の私があります』と言ってくださり、本当に感動しました。

その方は現在も1年以上同じ会社で勤め続けており、先日お会いした時も元気な姿を見せてくれました。こうした経験は本当に思い出深いものです。」

チームワークを重視した職場環境

ー職場の雰囲気について教えてください。

「私たちの事業所は、上下関係よりもチームとしての横のつながりを大切にしています。業務変更や問題解決の際も、一人が決めるのではなく、みんなで話し合い、フォローし合いながら決断していくという助け合いの精神で運営しています。

スタッフには福祉・介護の現場で経験を積んだ方が多く、主任は利用者さんにとって『お母さん』のような存在です。どんな些細な悩みでも時間を気にせず真摯に受け止め、利用者さんが話しやすい環境を作っています。」

福祉×ITに大きな可能性を感じて

ー今後の展望について聞かせてください。

「私は福祉とITの組み合わせに大きな可能性を感じています。通勤が難しい方や対人関係に悩みを持つ方にとって、ITスキルは在宅での訓練や仕事を可能にするため、選択肢を大きく広げてくれます。障害があっても、自分のやりたいことを諦めずに済むという点で、IT分野は福祉と非常に相性が良いと考えています。

当スクールからは年間約20名の方が卒業し、就職されています。『障害があっても就職を諦めない』『自分らしく働ける環境を見つける』ということを目指して、私たちは日々サポートを行っています。

仙台駅前という好立地もあり、多くの方から問い合わせをいただいています。今後もこの組織をさらに発展させ、ITに興味はあるけれど一歩を踏み出せずにいる方にも手を差し伸べられるような事業所にしていきたいと考えています。」

新たな仲間へのメッセージ

ー今後スタッフとして一緒に働きたい方について教えてください。

「私たちの事業所らしい人、つまり素直で元気、明るく挨拶ができる方と一緒に働きたいと思っています。

社会人としての基本的なあり方も重要で、遅刻せず時間を守り、ミスをしたときには素直に認め、再発防止策を自ら考えられる方を求めています。嘘をつかず、誠実に対応できることも大切です。

何より、利用者さんの問題をどう解決できるかを自分ごととして考え、まっすぐに一生懸命取り組める方と出会いたいですね。」

地域での存在意義

ーITスクール仙台を地域でどのような存在にしたいですか?

「『仙台でITを学ぶならITスクール』と皆さんに思ってもらえるような存在になりたいです。『あそこに通えば自分の望む未来が実現できる』と確信できる、そんな頼りになる事業所を目指しています。」

利用を検討されている方へのメッセージ

ー最後に、利用を検討されている方へメッセージをお願いします。

「少しでもITスクールに興味を持っていただいたなら、まずは問い合わせや見学、体験にお越しください。新しいことへの一歩を踏み出すのは勇気のいることですが、その勇気ある決断を私たちは心から尊重します。

実際に事業所の雰囲気や通われている方々の様子を自分の目で見て、耳で聞いて、判断材料にしていただければと思います。

私たちは『障害のある方も自分らしく生きてほしい』というビジョンのもと、社会の課題に取り組んでいます。障害を理由に自分の可能性を狭めることがないよう、全力でサポートします。

障害は個人の問題ではなく、社会の側面に大きく関わるものです。困難さや生きづらさを少しでも取り除き、一人ひとりが自分らしく社会貢献できる環境づくりに貢献していきたいと考えています。」

編集後記

岩松代表のお話からは、単なる就労支援を超えた深い人間愛と社会に対する強い使命感が感じられました。「障害があっても自分らしく働ける」社会の実現に向けて、福祉×ITという新たな可能性を追求する就労移行ITスクール仙台の取り組みは、多くの方にとって希望の光となることでしょう。

就労移行ITスクール仙台

  • 所在地:仙台駅前
  • 代表:岩松氏
  • 年間卒業生:約20名

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