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INTERVIEW

25年の経験が紡ぐ支援哲学—新堂さんが語る、一人ひとりを大切にする福祉の心

「支援するとされるという立場を超えて、人と人として向き合って信頼し合えるつながりを大事にしています」—そう語るのは、仙台市内の就労移行ITスクール仙台でサービス管理責任者として働く新堂さんです。25年以上にわたって福祉の現場で活動し続ける新堂さんに、支援への想いや仙台での取り組みについてお話を伺いました。

新堂さんプロフィール

福祉の仕事に携わって25年以上の経験を持つベテランサービス管理責任者。介護を中心としたキャリアからスタートし、就労継続支援B型事業所での支援を経て、現在は就労移行ITスクール仙台で活動。「一人一人に寄り添う」という軸を変えることなく、利用者さんの自己理解と成長を支えている。

福祉の世界に導いた原点

身近な人の障害がきっかけに

新堂さんが福祉の道を歩むきっかけとなったのは、身近な人が障害を持っていたことでした。

「その人にもっといい対応をしたい、いい方向に向けていきたい」

そんな思いから障害者施設に就職し、様々な特性を持つ方々との関わりを通じて、支援の難しさ一人一人を大事にした考え方の大切さを実感したといいます。

一度は福祉とは異なる分野のパソコン教室で働いたこともありましたが、「自分らしく働くことができず」、やはり人と関わる仕事への想いを再確認。現在のキャリアにつながっています。

サービス管理責任者としての役割

現在ITスクールで担っているサービス管理責任者の業務は多岐にわたります:

  • 個別支援計画の作成:利用者さんの希望や目標、課題を整理・分析し、必要な支援を提供
  • 定期的なモニタリング:計画が適切に行われているかをチェックし、必要に応じて見直し
  • チームマネジメント:生活支援員や職業指導員との連携により、支援を円滑に進行
  • 外部機関との連携:医療機関、家族、相談支援専門員、市町村役場などとの情報共有
  • サービス品質向上:研修や業務改善活動の実施

大切にしている支援の哲学

「タイミング」と「気づき」を重視

新堂さんが最も大切にしているのは、利用者さん自身のタイミングと気づきです。

「どんなにいい支援やアドバイスを行っても、利用者さんが自分で納得して選んだタイミングでなければ、本当の意味での前進、成長にはならない」

そのため、無理に急かすことはせず、じっくりと見守ることを心がけています。利用者さんが自発的に変わろうとする意欲が自然に生まれるような環境づくりに力を入れ、小さな成功体験の積み重ねや、失敗を責めずに受け入れることで、安心して振り返りができる関係性の構築を目指しています。

笑顔が増える支援を

「ここに来て良かった」「ちょっとでも勉強になった」「今まで以上に笑顔が増えた」—そんな気持ちを利用者さんに持ってもらえるような対応を常に意識しているといいます。

心に残る支援のエピソード

25年間の福祉経験の中で、特に印象に残っている出来事があります。辛い環境で育ち、過去の出来事に囚われて前に進むことができずにいた利用者さんとの関わりです。

初めは自信を持てず、未来に希望を持てない様子でしたが、少しずつの関わりを通じて、自分の気持ちに向き合い変わろうとする姿が見られるように。そしてある日、「誰かの支えをしたい」「自分も誰かを支える仕事がしたい」と話してくれました。

その思いを実現するために資格取得に向けて積極的に行動を起こしている姿を見た時、新堂さんは深く感動したといいます。

「誰かの支えがきっかけとなって、今度は自分が誰かを支える側になる。その循環を目の当たりにした時は、支援の可能性と深さを実感しました」

ITスクールでの独自のサポート体制

自分らしさを見つける支援

ITスクールでは、ただ単に仕事のスキルを教えるだけでなく、利用者さん自身が自分らしさや軸を見つけられるような支援を行っています。

自己理解を深めるための自己分析シートやワークシート、振り返りの時間を必ず設け、「自分は何が得意か」「どんな仕事に向いているか」「自分らしく働くために大切なことは何か」といった気づきをサポート。利用者さんが自分の変化を実感できる独自のプログラムにより、自信につながり、前向きに次のステップに進む力を育んでいます。

パソコン未経験でも安心

「ITスクール」という名前から難しそうな印象を受けがちですが、実際はタイピング練習や自己理解など、興味のあることから少しずつ進められる環境が整っています。

「パソコンを全く触ったことがない」という方でも問題なし。初めて来た時にタイピング50程度だった方が、丁寧な指導により250まで打てるようになった実例もあります。

和やかで柔軟な職場環境

ITスクールの職場は、「時には真面目に、時には賑やかに」というメリハリのある雰囲気が特徴です。職員同士のコミュニケーションでは、時にはふざけた話もありますが、それも支援のヒントになると考え、明確な問題行動以外はなるべく受け入れる柔軟なスタンスを取っています。

自由に意見を出し合える環境づくりにより、チーム全体の信頼関係が高まり、結果として利用者さんへの支援の質向上につながっています。多様な職歴を持つ前向きな職員が多く、「誰かの役に立ちたい」という思いを共有する仲間たちが働いています。

福祉業界で働きたい方へのメッセージ

福祉業界に興味はあるけれど迷っている方に向けて、新堂さんは温かいメッセージを送ります。

「誰かの役に立ちたい、支えになりたいという気持ちがある方には、福祉の仕事はとてもやりがいがある分野です。完璧であることよりも、相手に寄り添いたいという気持ちが何よりも大事。経験がなくても大丈夫です」

一人一人の歩みを支える仕事だからこそ、一緒に悩みながら並走していく姿勢を大事にしており、「始めてみたい」と思った気持ちを大事にしてほしいと語ります。

すべての人が自分らしく生きられる社会を目指して

インタビューの最後に、新堂さんは力強くメッセージを語ってくれました。

「赤ちゃんからお年寄りまで、すべての人は一人一人がかけがえのない人間です。年齢や障害の有無にかかわらず、誰もが尊重され自分らしく生きる権利があります」

目指しているのは一方通行の支援ではなく、共に考えて共に歩む関係。支援するとされるという立場を超えて、人と人として向き合い信頼し合えるつながりを大事にし、誰もが安心して暮らせる社会の実現を目指しています。

祖母の介護経験や身近な人の障害との出会いがきっかけとなり、「誰かのために少しでもいい人生を歩んでほしい」という強い思いを持ち続ける新堂さん。25年間にわたって学び続け、一人一人が自分らしく生きられる社会の実現に向けて、仙台の地で今日も支援を続けています。

編集後記

新堂さんのお話から、真の支援とは何かを改めて考えさせられました。利用者さんの「タイミング」を大切にし、支援する側とされる側という枠を超えた人間関係を築く姿勢は、福祉の現場だけでなく、私たちの日常生活においても大切な視点だと感じます。仙台で活動する新堂さんのような方々によって、多くの人が希望を見つけ、自分らしい人生を歩んでいることでしょう。

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