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INTERVIEW

三代続く信頼と技術――株式会社清水園 守屋社長が語る、造園業の未来と挑戦

創業62年、職人の誇りとお客様第一主義で築く造園の世界

仙台市を拠点に造園業を営む株式会社清水園。創業から長い歴史を持つこの企業を率いるのは、三代目代表の守屋公二剛社長です。自らを「現場が大好き」と語る守屋社長は、32年にわたり造園の世界に身を置き、数々の賞も受賞している実力派の職人でもあります。

今回、VOICE SENDAIは守屋社長にお話を伺い、造園業への情熱、人材育成への想い、そして新しい取り組みについて語っていただきました。

三代続く信頼の絆――お客様との長い付き合い

「株式会社清水園の代表、守屋公二剛と申します」と穏やかに自己紹介を始めた守屋社長。個人企業からスタートした清水園は、現在三代目となる守屋社長のもとで、公共工事や民間庭づくり・庭園管理・特殊伐採まで幅広い事業を展開しています。

特筆すべきは、三代にわたってお付き合いのあるお客様がいることです。「おじいちゃんの代から仕事をいただいていたお客様が、今では孫の代まで私とお付き合いしているんです」と守屋社長。三代目まで続くお客様との関係は珍しく、それだけ信頼されている証拠だと言えます。

その秘訣について、守屋社長は「私は意外とお客ファーストなんです。お客様を裏切らないように常に心がけています。私と付き合うとちょっとお得するよ、というような感じの付き合い方をしていますね」と笑顔で語ります。

社長自らが現場へ――職人としての誇り

守屋社長の特徴は、社長でありながら「現場が大好き」だということです。

「この間まで求人を出していたんですけど、代わりに社長をやってくれる人を募集していたんですよ。友達の冷やかししか結局来なかったですけどね」と冗談めかして話す守屋社長ですが、その言葉には現場への強い愛着が感じられます。

「私にとっては1年間の仕事のうちの一日かもしれませんが、お客様にとっては1年に一度の私になります。だからできるだけ顔を合わせておきたいというのが本音です」

長く付き合っているお客様のもとには、所用がない限りは顔を出すよう心がけているという守屋社長。その姿勢こそが、清水園の信頼を築いてきた基盤なのでしょう。

一流を目指す――質を重視した会社経営

「個人的に、会社を大きくするつもりはさらさらないんです」と守屋社長は明言します。

その理由は、お客様第一主義にあります。「人が増えると、私の目が届かなくなることが必ず出てきます。誰が行ったとしても『清水園でよかった』と言われるような会社作りがブランドとして必要なので、人数を無闇に増やして質を落とすことは考えていません」

実際、清水園は建設国民健康保険組合の事務員さんから「一番出入りが多い植木屋」と言われているそうです。それは人が多く入り多く辞めるということですが、守屋社長はそれを否定的には捉えていません。

「私はメジャーリーグみたいな一流を目指して頑張っているので、社員全員が一流を目指す人たちが集まらなければなりません。草野球くらいでいいよ、という人が入ってきても、居心地が悪くちょっと違うなとなって辞めてしまうんです。でも残っていれば、他の会社では得られない技術や知識を身につけることができます」

未来を見据えた挑戦――英語を社内公用語に

驚くべきことに、守屋社長は「5年後には会社内の公用語を英語にしたいと思っています」と語ります。

そのために外国人スタッフを採用し、日常的に英語を使う環境を作って行くと言います。「日本でありながら、外国の英語も飛び交うような環境が一番いいと思います。英会話教室に通うより、生きた英語を話せるようになるのではないかと」

世界を見据えた人材育成を行う守屋社長の視野の広さには、驚かされるばかりです。

造園業ならではの魅力――生きたものを扱う仕事

「庭を作るのは、最初のスタートだけなんです」と守屋社長は語ります。

「建築業の28業種は、引き渡した時が一番美しいんですけど、私たちは生きた材料を使っていますから、引き渡した時が一番美しいとも限りません。そこから綺麗にするのも汚くするのも、管理の問題です。引き渡した後にだんだん綺麗になっている場合もあるし、ダメになっている場合もあります。その辺がやっぱり造園業の面白いところですね」

生きた植物を扱うからこその奥深さと、長期的な関係性。それが造園業の魅力だと守屋社長は教えてくれました。

社会貢献への取り組み――障がい者施設とのコラボレーション

清水園のもう一つの特徴的な取り組みが、就労支援B型施設「杜の工房」との連携です。

「もともと労働者の後継者問題がありました。草刈りをする後継者はいても、草取りをするおばちゃんが高齢で働く人がいなくなってしまったんです」と守屋社長。

その解決策として始めたのが、障がい者施設との協働です。「最初は障がい者だから騒ぐんじゃないかとか、暴れるんじゃないかとか、周りの批判的な印象が多かったんです。でも一生懸命に働くし、今では批判的な人もいなくなりお客様からも高い評価をいただいています」

現在では、東北福祉大学の敷地内や幼稚園、近所のお寺などの草取りを行い、徐々に作業範囲が広がっています。

「待機児童の話は大きく出ますが、待機障がい者の話は声が小さいんです。仕事がない障がい者施設が結構あるんですよ」

守屋社長は、障がい者の可能性についてこう語ります。「できないと決めつけているのは健常者の方で、意外に教えない、やらせないだけです。やったら結構何でもできる人たちなんだなと思います」

薪の販売も「杜の工房」に委託し、清水園から出る剪定枝などを原料として活用しています。

門松制作で広がる世界――仙台の伝統を守る

清水園のもう一つの顔が、門松制作です。守屋社長は毎年6基の門松を制作しており、その納品先は錚々たる顔ぶれです。

仙台市役所の玄関前、ウェスティンホテル仙台、海の杜水族館など――。「聞けばわかる場所に飾っているんですよ。2週間だけですけどね」と守屋社長は笑います。

門松制作は、10月中旬から始まります。稲刈り後に藁を乾かし、締め縄を一週間に一つづつのペースで編むところから始まり、12月25日まで計画的に作り上げていきます。「今のところ作れるのは私しかいないので」と守屋社長。

「門松を頑張っていけば、聞いたことのある会社から仕事が来るチャンスがあります。独立した人にとって、有名な企業から仕事が来るかわからないチャンスなんてそうそうないですからね」

門松制作を通じて、多くの企業の社長たちと友達になったという守屋社長。人脈の広がりも、門松がもたらしてくれた財産だと語ります。

求める人物像――「できない」という言葉は禁止

「とにかく負けない気持ちを持っている人」――それが守屋社長が求める人物像です。

「入社する時に言うんですけど、『できない』『わからない』『やったことがない』、この言葉を絶対言うなと。やったことがないのは誰でも同じですが、やったことがないからやらないというのは別問題です」

お客様から依頼された仕事を「できません」と断ってしまえば、お客様は他社に取られてしまいます。「一度取られた仕事は戻ってきませんから、できないという言葉は口が裂けても言ってはいけないんです」

守屋社長の口癖は「余裕っすね」。新規のお客様に「できますか?」と聞かれたら、必ずこう答えるそうです。「断られ疲れをしているお客様も多いので、その言葉に救われることもあるみたいです。ただし、『高いですよ』とは言いますけどね」と笑います。

未経験者大歓迎――ゼロから育てる教育方針

意外なことに、守屋社長は未経験者を好むといいます。

「どこで仕事してきたかわからない『経験あります』という人は、だいたい出来ないんですよ。今までそんな人来たことないですね」とはっきり言います。「そんなに出来るなら最初から独立して社長になってますよ」

そのため、清水園では資格取得のサポートも充実しています。費用は会社が全額貸与しますが、3年間は会社のために働いてもらうという条件付きです。「こちらも仕事ですので、3年働かなかった場合は全額返してもらいます」

守屋社長は若い社員たちに、こう伝えているそうです。「10年後に私の代わりに社長になってもらいたい。10年後に君たちがダメだったら会社を畳むから、そのつもりでいてください。私は65歳で辞めますから」

職人としてのプライド――ピカピカの車で仕事をする

「コンビニで友達に会った時に、社員が恥ずかしい思いをしない会社であることが大事です」と守屋社長は語ります。

「サビだらけの車なんて一切ありません。社長だけピカピカのレクサスに乗るということもありません。社長も社員もいつもピカピカな車で仕事ができる。それがプライドの問題なんです」

プライドを持って仕事をし、様々な技術を覚える。それが清水園のスタイルです。「かなり厳しいですけど、安心できる会社だと思います」

おわりに

三代続く信頼と、職人としての誇り。お客様第一主義を貫きながら、新しい技術への挑戦を続け、社会貢献にも力を入れる――株式会社清水園の守屋社長の姿勢には、造園業の未来を切り開こうとする強い意志が感じられました。

「誰が頼んだとしても『清水園でよかった』と言われる会社」を目指して、守屋社長の挑戦はこれからも続きます。


株式会社清水園
ホームページ: https://zouennet.jp/

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杜の都散策ライター

はじめまして、「Voice Sendai」でWEBライターを務めるO.Wと申します。仙台生まれ仙台育ちの地元っ子として、杜の都の隠れた名店から四季折々の絶景スポットまで、地元ならではの視点でお届けしています。特に牛タンや笹かまぼこといった郷土料理から、定禅寺ストリートジャズフェスティバルや七夕まつりなどの伝統行事まで、仙台の食と文化に精通。幼い頃から読書が好きで培った文章力と、地元への深い愛着を組み合わせ、歴史的背景や文化的価値も交えた深みのある記事作りを心がけています。プライベートでは市内各所のカフェ巡りが趣味で、仙台のコーヒーシーンにも詳しいです。「Voice Sendai」では「地元民だからこそ知る仙台の魅力」をモットーに、観光客だけでなく地元の方にも新たな発見をお届けできるような記事を目指しています。仙台にお越しの際は、ぜひ私の記事を片手に街歩きを楽しんでください。

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