今回は、「怒りを灯り(あかり)に変える」をテーマに、発達特性への理解や怒りのコントロールの普及活動を行う「凹凸(おうとつ)ラボ」代表・木村絵美子さんにお話を伺いました。
ご自身も二人の息子さんを育てる母親であり、社会福祉士としての経験も持つ木村さん。なぜ今、「怒り」のコントロールや「発達特性」の共有が必要なのか。仙台での活動に込めた想いと、その原点に迫ります。
プロフェッショナルであり、一人の「悩める母」だった
――「凹凸ラボ」の活動内容について教えてください。
「怒りを灯りに変える」を大きなテーマに掲げ、人それぞれの苦手と得意、つまり「凹凸」を補い合える社会を目指して活動しています。
具体的には、怒りの感情をコントロールする講座やセミナー、そしてお互いの発達特性を知り合うワークショップなどが中心です。私自身、小学5年生と3年生の息子を育てる母親でもあるので、保護者や当事者の方との個別相談なども行っています。
――活動を始められたきっかけは何だったのでしょうか?
もともと私は大学で福祉を学び、社会福祉士として障害福祉の現場で働いていました。当事者やご家族に寄り添う仕事をしていたのですが、実際に自分が親になり、特に次男の子育てに向き合った時、景色が一変したんです。
次男の発達特性ゆえの行動に対して、周囲から冷ややかな目で見られる場面が何度もありました。専門職として支援していたはずの自分が、いざ当事者の親という立場になった時、「こんなにも理解されていないのか」「こんなに悲しい思いをするのか」と、失望にも似た深い悲しみを感じました。
正しい知識を持たない人が多いからこそ、こういった摩擦が起きるのだと痛感したことが、活動の原点になっています。
「困っているのは、子ども自身」という気づき
――ご自身の経験から、どのような価値観の変化がありましたか?
かつての私は、思い通りにいかない子育てに対してイライラし、怒ってばかりでした。「なんで言うことを聞かないの」「いい加減にして」と、子どもに対しても、そしてうまくできない自分に対しても怒りをぶつけてしまっていたんです。
そんな時、アンガーマネジメント(怒りのコントロール)や発達特性への学びを深め、子どもへの見方が180度変わりました。
それまでは「私の手を煩わせる『困った子』」だと思っていました。でも、実はそうではなく、「どうしていいか分からずに一番『困っている』のは、子ども自身なんだ」と気づいたんです。
この視点の転換は大きかったですね。相手が困っているのなら、怒るのではなく「どう助けたらいいか」を考えればいい。そう思えた途端、自分を責める気持ちやイライラがぐっと減り、生きるのがとても楽になりました。
子どもたちの柔軟性に感動した小学校での授業
――これまでの活動で、特に印象に残っているエピソードはありますか?
昨年、仙台市内の小学校で「怒りをチカラに変える」という授業をさせていただいたことです。45分間という短い時間でしたが、子どもたちの柔軟性には本当に驚かされました。
授業では「怒ることは悪いことではないけれど、人に当たったり物を壊したりするのは違うよね」という話をしました。後日、100通を超えるお手紙をいただいたのですが、そこには「ムカッとしたけど、手を出さずに話を聞いてみた」「自分なりにこうしてみようと思う」といった、彼らなりの実践や気づきが綴られていました。
大人は知識や経験がある分、頭が固くなりがちですが、子どもたちはスポンジのように吸収してくれます。正しい知識を伝える大切さと、子どもたちが持つ可能性を肌で感じた瞬間でした。
誰もが「助けて」と言える仙台に
――木村さんは転勤で仙台に来られて7年目とのことですが、仙台という街にどのような可能性を感じていますか?
仙台は、震災からの復興も含め、人々の粘り強さや優しさを強く感じる街です。私自身、夫の転勤でこの土地に来ましたが、人の温かさに救われてきました。
今後は、教育機関はもちろん、企業に対しても活動を広げていきたいと考えています。「合理的配慮」という言葉がありますが、障害のあるなしに関わらず、お互いの特性を知り、補い合う意識は組織作りにおいても重要です。
また、地域の中でのつながりも深めていきたいですね。学校の先生だけでなく、地域で子どもを見守る方々と連携し、子どもたちが生きやすい環境を地域全体で作っていけたらと願っています。
苦しい時は、一人で抱え込まないで
――最後に、子育てや人間関係に悩む読者の方へメッセージをお願いします。
子育てや、自身の特性との付き合いは、時にとても苦しいものです。ついつい自分を責めたり、身近な家族に怒りをぶつけてしまったりする場面もあると思います。
でも、どうか自分を責めないでください。そして、「人に頼る」「相談する」ということも、自立のための大切なスキルの一つです。
大人にとっても、現状を変えるための「スモールステップ」は大切です。まずは自分の特性や怒りの傾向を知ること。そして、一人で抱え込まずに誰かに話してみること。
私のような活動をしている人間でも、地域の相談機関でも構いません。身近なところと繋がって、少しでも肩の荷を下ろしてください。「自分には関係ない」と思わずに、まずは知るところから始めていただければ嬉しいです。
【取材後記】
「かつては自分も怒ってばかりで、途方に暮れていた」と率直に語ってくださった木村さん。その言葉には、実体験に基づいた強さと優しさが共存していました。「困った子」ではなく「困っている子」。その視点の転換は、子育てだけでなく、あらゆる人間関係におけるヒントになりそうです。
■取材協力
凹凸ラボ
代表:木村 絵美子
公式HP:https://outotsulabo.com/

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