仙台で輝く!障害者就労支援の新たな可能性を切り拓く「ホプラス」森本代表にインタビュー
仙台市内で障害者の就労支援に取り組む多機能型事業所「ホプラス」。うつ病や発達障害、適応障害などのメンタルヘルス不調を抱える方々の社会復帰をサポートする同事業所では、最新のVR技術を活用したソーシャルスキルトレーニングや100種類を超える講座プログラムなど、革新的な取り組みで注目を集めています。今回は代表の森本さんに、事業への想いや仙台での展開について詳しくお話を伺いました。
森本代表プロフィール
多機能型障害者支援事業所「ホプラス」代表。もともとは営業職として活躍していたが、発達障害を持ついとこの就職難を目の当たりにし、障害者福祉の世界へ転身。「利用者ファースト」の理念のもと、一人ひとりに寄り添った支援を実践している。
「ホプラス」が目指す多機能型支援とは
ホプラスカレッジ(自立訓練事業)の取り組み
ホプラスでは、自立訓練事業を「ホプラスカレッジ」と名づけ、うつ病や発達障害、適応障害などメンタルヘルスの不調を抱えている方が就職や再就職に向けてスキルを成長できるキャンパスとして運営しています。
「パソコンスキル、特にプログラミングやWord、Excelといった実践的なスキルアップを目指した訓練ができる場所を提供しています」と森本さん。さらに、自己管理スキル、自己理解スキル、コミュニケーションスキルといった就職に必要な土台作りも重視されています。
就労継続支援B型事業所での実践的な職業訓練
B型事業所では、パソコンを使った実際のお仕事を通じて社会復帰を目指します。データ入力、文書作成、簡単なデザイン作業、インターネットを活用した調査、ウェブページの運用など、幅広い業務を展開しています。
「最初は週2回の通所からスタートした方が、半年後には週4、週5と通所できるようになり、継続して生産活動に取り組まれる方も多くいらっしゃいます」
革新的な支援プログラムの数々
大塚製薬監修のVRソーシャルスキルトレーニング
ホプラスの特徴的な取り組みの一つが、大塚製薬監修のVRを用いたソーシャルスキルトレーニングです。仮想空間で現実に近いシミュレーションを体験できるこのシステムでは、コンビニの店員としてレジ打ちを行ったり、家族との食事の場面で適切な対応を学んだりできます。
「心の声もVRから聞こえてくるので、実際に疑似体験することができます。その後、スタッフや他の利用者と振り返りを行い、コミュニケーションの体験を積み重ねていけるんです」
100種類以上の豊富な講座プログラム
毎日1時間程度の講座を開催し、就職活動、生活習慣の改善、社会人基礎能力の向上、レクリエーションなど多岐にわたるプログラムを用意。特に人気が高いのは履歴書の書き方、職務経歴書の書き方、就職活動の心構えに関する講座です。
利用者に寄り添う支援体制
現在の利用状況とスタッフ体制
- B型事業所:利用者17名、スタッフ3名体制(サービス管理責任者、職業指導員、生活支援員)
- 自立訓練事業:登録者5名、スタッフ3名体制(サービス管理責任者は兼務)
- 全体:5名のスタッフで運営
在宅就労への対応
コロナ禍以降の働き方の変化にも対応し、在宅でのパソコンを使った事務職を目標とした在宅訓練も実施。ただし、「基本的には通所しての勤怠安定が大きな目標」として、在宅訓練はそれをサポートするものと位置づけています。
森本代表が語る事業への想い
福祉の世界に足を踏み入れたきっかけ
森本さんが障害者福祉に携わるようになったのは、身近な体験がきっかけでした。
「私の身内にいとこに発達障害の子がいて、就職が難しく家に引きこもってしまい、将来をどうしたらいいかわからないという悩みを小さい頃からずっと聞いていました」
もともと営業職として人の相談に乗ったり悩みを聞いたりする経験を積んできた森本さんは、「発達障害の方やうつに悩まれている方の役に立ちたい」という想いでこの業界に入りました。
「利用者ファースト」の理念
事業の根幹にあるのは「利用者ファースト」の考え方です。
「利用者さんご自身の意思を大事にして、しっかりとその方の話を傾聴し、できることとできない部分をすり合わせていくことで、本人が納得できるような道筋や計画を立てる。その人が最終的にどんな姿になりたいのかを、しっかりと伴奏していきたい」
印象に残る利用者とのエピソード
森本さんが最も印象に残っているのは、ある利用者の就職までの道のりです。
「最初は週3回程度しか体調やメンタルの関係で通えなかった方が、日々のコミュニケーションを通じて週5回通所できるようになりました。就職活動では50社ほど応募して、何度も落ち込みましたが、一緒に頑張った結果、最終的にパソコンを使った事務職に就職できたんです」
「就職が決まったときに『森本さんのおかげで就職できました。ありがとう』と感謝されたときは本当に嬉しくて、もっと多くの方の社会復帰を支援したいと改めて思いました」
仙台から全国へ—未来への展望
仙台のウェブメディア事業への挑戦
今後の展開として、森本さんは仙台の地域性を活かした取り組みを計画しています。
「B型のお仕事に関して、仙台のウェブメディア事業を強化したいと考えています。飲食店や新しいお店の情報発信など、利用者の方と一緒に仙台の魅力を伝える母体を作っていきたいですね」
全国展開への意欲
「ホプラスカレッジの魅力を仙台だけでなく、全国に向けて事業所自体を大きくしていきたい」と、さらなる発展への意欲を語ります。
社会に向けた想いとメッセージ
理想とする社会の実現に向けて
森本さんが目指すのは、障害のある方一人ひとりが責任や役割を持てる社会です。
「利用者さんたちも何かしらの責任や役割があることで活動できる方が多くいらっしゃいます。企業や人事担当者の障害に対する理解や意識がもっと深まれば、社会復帰する方がさらに増えると考えています」
当事者と支援者へのメッセージ
悩みを抱える方々へ
「今、自分に対して落ち込みがあったり、今後どうしていいかわからない、先が見えないという方は、福祉事業所を通じて現状を変えることができます。まずはお気軽に、自分の悩みを打ち明けてほしい」
支援に関わる方々へ
「支援員は常にスキルアップを心がけ、まずは話を聞いて受け止めることを大事にして、一緒に伴奏していく気持ちを持って支援に当たってほしい」
編集後記
森本さんのお話からは、障害者支援への深い愛情と、利用者一人ひとりに真摯に向き合う姿勢が強く感じられました。仙台発の革新的な支援スタイルが、全国の障害者就労支援の新たなモデルケースとなることを期待しています。VR技術の活用や地域密着型のウェブメディア事業など、時代のニーズを捉えた取り組みは、きっと多くの方々の希望の光となることでしょう。
取材協力:多機能型障害者支援事業所「ホプラス」
※本記事は2025年8月の取材をもとに作成されています
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