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INTERVIEW

一人ひとりの可能性を信じて—多機能型事業所「ホプラス」森本代表に聞く、障害者就労支援への想い

仙台就労継続支援B型、仙台自立訓練事業所、ホプラス、HOLUS

「ホプラスカレッジ」で描く、新しい就労支援のかたち

—— まず、ホプラスさんの事業内容について教えてください。

森本氏:ホプラスは多機能型として、就労継続支援B型事業所と自立訓練の生活訓練という2つの事業が一体となった施設です。

自立訓練事業については「ホプラスカレッジ」と名付けています。うつ病や発達障害、適応障害などメンタルヘルスの不調を抱えている方が、就職や再就職に向けて自分自身のスキルを成長できるキャンパスとして活動しています。

パソコンスキルを中心に、プログラミングからWord、Excelまで幅広く対応しています。ただし、就職を目指す上で重要なのは技術スキルだけではありません。自己管理スキル、自己理解、コミュニケーションスキルなど、就職に向けた土台作りをしっかりと行っていく場所なんです。

一方、就労継続支援B型事業所では、データ入力、文書作成、簡単なデザイン作業、インターネットを活用した調査、ホームページやウェブページの運用など、パソコンを使ったお仕事を通じて、最終的な社会復帰を目指しています。

週2回から始まる、小さな一歩の積み重ね

—— どのような方が利用されているのでしょうか?

森本氏:就職をしたものの職場に馴染めずに仕事に行けなくなった方、生活リズムが整わず、社会復帰を目指したいけれどもなかなか活動ができない方が多くいらっしゃいます。

そんな方々が、日々の訓練を通じて少しずつ生活リズムを整えていくんです。最初は週2回から通所をスタートして、半年経つ頃には週4、週5に通所できるようになり、継続して生産活動に取り組んでいる方もいらっしゃいます。

現在、B型事業所には17名の利用者がいらっしゃり、サービス管理責任者、職業指導員、生活支援員の3名体制で運営しています。自立訓練には5名の登録者がいらっしゃり、全体では5名のスタッフで支援にあたっています。

最先端VR技術で体験する、リアルなソーシャルスキル

—— VRを用いたソーシャルスキルトレーニングを導入されているとお聞きしました。

森本氏:大塚製薬さん監修のVRを用いたソーシャルスキルトレーニングを導入しています。仮想空間でリアルなシミュレーションを体験できるんです。

例えば、コンビニの店員としてお客さんの対応をしたり、家族の食事の場面でお母さんからの質問にどう答えるかなど、実際の生活場面を疑似体験できます。心の声もVRから聞こえてくるので、より深い理解が得られます。

体験後は、スタッフや他の利用者の方と一緒に振り返りを行い、「この場合はどうすればよかったのか」を話し合うことで、コミュニケーションスキルを身につけていきます。

100種類以上のプログラムで、一人ひとりの成長をサポート

—— 講座プログラムについて詳しく教えてください。

森本氏:毎日1時間程度の講座を用意しています。就職活動、生活習慣の改善、社会人基礎能力の向上、そしてレクリエーションやボードゲームなど、多岐にわたります。

レクリエーションも人気ですが、学習面では就職活動に関する講座が特に好評です。履歴書の書き方、職務経歴書の作成方法、就職活動に必要な心構えなど、実践的な内容が「すごく役に立った」と利用者さんからも高い評価をいただいています。

また、在宅での訓練にも対応しています。在宅でのパソコンを使った事務職の求人もありますので、それを目標とした在宅訓練を取り入れています。ただし、基本的には通所して勤怠の安定を図ることが大きな目標ですので、それをサポートするための在宅訓練という位置づけです。

身近な体験から生まれた、支援への想い

—— この事業を始めようと思ったきっかけを教えてください。

森本氏:私の身内に発達障害のいとこがいたんです。その子もなかなか就職が難しく、ずっと家に引きこもっていました。親も「将来どうしていいかわからない」と、私が小さい頃からずっと聞いていた悩みでした。

私自身はもともと福祉業界にいたわけではなく、ずっと営業の仕事をしてきました。人の相談に乗ったり、悩みを聞くという経験を積んできたので、実際に福祉の世界に入って、発達障害の方やうつに悩まれている方の役に立ちたいという思いで、この業界に入ってきました。

「利用者さんファースト」—一人ひとりに寄り添う支援

—— 事業を立ち上げる際に大切にされた理念はありますか?

森本氏:「利用者さんファースト」です。利用者さんご自身の意思を大事にして、まずはしっかりとその方の話を聞くことから始めます。

その中で、できることとできない部分をすり合わせ、本人が納得できるような道、計画を立てる。その本人が最終的にどんな姿になりたいのかを、しっかりと伴走していきたいと思っています。

50社の面接を共に乗り越えた、忘れられない体験

—— 印象に残っている利用者さんとのエピソードはありますか?

森本氏:最初は週3回程度しか体調やメンタルの関係で通えなかった方がいらっしゃいました。日々コミュニケーションを重ねる中で、週5回通所できるようになり、就職活動を始めることになったんです。

ただ、すぐには内定をもらえませんでした。面接や書類選考で50社ほど一緒に挑戦し、何度も落ち込みましたが、「一緒に頑張ろう」と支え合いながら、最終的にパソコンを使った事務職に就職することができました。

就職が決まったとき、「森本さんのおかげで就職できた、ありがとう」と感謝されたときは本当に嬉しかったですね。これからも、いろんな方が社会復帰していけるよう支援したいと思っています。

素直な気持ちが言えるようになる瞬間

—— 利用者さんの成長を感じる瞬間はありますか?

森本氏:最初は新しい環境に慣れることから始まりますが、素直に自分の気持ちが言えるようになったときが、最初の大きな成長の瞬間です。

信頼していただけたんだな、自分の気持ちを主張できるようになったんだなと、その変化を感じることができます。

一人ひとりが役割を持てる社会を目指して

—— この事業を通じて、どのような社会を実現したいとお考えですか?

森本氏:利用者さんたち一人ひとりが、何かしらの責任や役割を持つことで、本当に活動できる方は多くいらっしゃいます。

それぞれが責任や役割を持てる社会を作ることができれば、もっと活躍できる世の中になると思います。そのためには、企業の方々や人事担当者が、障害に関しての理解・意識を深めていくことが重要です。

自立していく方をもっと増やすためにも、みんなの理解と認知が必要だと考えています。

自己理解を深めることの重要性

—— 現在の障害者就労支援について、課題を感じる部分はありますか?

森本氏:障害に関する認知度は広がり、自分の症状を認め始めている方も増えています。ただ、社会の理解が深まる一方で、利用者さん、当事者本人の自己理解も重要な課題だと感じています。

今の自分の立ち位置や特性をしっかりと理解すること。支援者としてはそこをしっかりと拾い上げ、各自が自己理解を深められるよう支援していくことが、より良い訓練とスタートにつながると思います。

仙台から全国へ—情報発信の母体を目指して

—— 今後の展望について教えてください。

森本氏:B型事業所では、仙台のウェブメディアとして、飲食店や新しいお店の情報発信ができる母体になりたいと思っています。利用者の方と一緒に情報発信できる場を作っていきたいですね。

そして、ホプラスカレッジとしては、仙台だけでなく、全国に向けて魅力あるホプラスカレッジを展開し、事業所自体を大きくしていきたいという思いがあります。

現状は変えられる—一歩踏み出す勇気を

—— 最後に、利用を検討されている方や同じ福祉に携わる方々へメッセージをお願いします。

森本氏:今、自分に対して落ち込みがあったり、今後どうしていいかわからない、先が見えないという方には、福祉事業所を通じて本当に現状は変えられるということをお伝えしたいです。まずはお気軽に自分の悩みを打ち明けてほしいと思います。

支援者・支援員の方々には、どんどんスキルアップしていって、まずは一旦受け止める—お話を聞いて受け止めてあげることを大事にして、一緒に伴走していく気持ちを持って支援にあたってほしいと思っています。

取材を終えて

森本代表のお話からは、一人ひとりの可能性を信じ、寄り添い続ける温かな姿勢が伝わってきました。VRを活用した最新の支援技術と、人と人とのつながりを大切にする心—その両方があるからこそ、ホプラスは多くの方々の社会復帰を支え続けているのでしょう。

多機能型事業所 ホプラス

  • 就労継続支援B型事業所
  • 自立訓練事業(ホプラスカレッジ)
  • VRソーシャルスキルトレーニング導入
  • 100種類以上の講座プログラム
  • 在宅訓練対応

本記事は2025年8月4日に実施されたインタビューを元に作成されました。

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