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INTERVIEW

「震えながら電話した最初の一歩」から始まった支援者への道 ~就労移行ITスクール仙台・本田さんが語る、障害のある方と共に歩む仕事の魅力~

仙台で活躍する人々を紹介するVOICE SENDAIの今回のゲストは、就労移行支援事業所「ITスクール仙台」で働く本田さんです。自身もパニック障害を抱えながら就労移行支援を利用した経験を持ち、現在は支援する側として利用者の方々と向き合っています。「震えながら電話をかけた」という当時の体験から、「仙台で一番の事業所を作りたい」という熱い想いまで、本田さんの人生の軌跡と現在のお仕事への情熱をお聞きしました。

本田さんプロフィール

ITスクール仙台職員。17歳の時にパニック障害を発症し、30歳頃に就労移行支援を利用。家具製作やオンラインショップ運営などの経験を経て、現在の職場に転職。利用者としての経験を活かし、障害のある方の就職支援に携わって3年目を迎える。

困っている人の力になりたい ~17歳で始まった挑戦~

本田さんがこの仕事を選んだ理由には、深い原体験があります。高校卒業のタイミングでパニック障害を発症し、一番ひどい時は部屋からも出られない状態になったといいます。

「そういうので困ってる人って別に自分だけじゃないんじゃないかなっていうのはあって、こういうふうに困ってる人どうしてんだろうなっていう、そういう人の力になりたいなっていうのがふわっと思ってて」

当時は就労移行支援という制度があることすら知らなかった本田さん。環境の変化が苦手で、小学校から中学校、中学校から高校へと進学するたびに体調を崩していたといいます。大学進学が決まっていたものの、体調面での不安から将来への道筋が見えない状態でした。

「震えながら電話した」就労移行支援との出会い

大学卒業後、アルバイトをしては体調を崩してやめる、ということを繰り返していた本田さん。30歳近くになって「そろそろしっかり仕事を、正社員として働かないとまずいんじゃないかな」という気持ちになった時、インターネットで検索して就労移行支援の存在を知ります。

「自分の病気入れて就職とか検索したらそういった事業所が出てきた。こんなとこあるんだと思って、震えながら電話したっていう経緯ですね」

就労移行支援に通うことで、本田さんに大きな変化が訪れました。最も大きかったのは生活リズムの改善でした。それまで朝寝て夕方起きるという生活だったのが、決められた時間に日中活動し、規則正しい生活を送れるようになったのです。

「やっぱり一人じゃないっていうところっていうのは心強かったかなっていうふうに思いますね」と振り返る本田さん。支援スタッフと相談しながら進められることの安心感は、不安障害を抱える本田さんにとって大きな支えとなりました。

利用者から支援者へ ~ITスクール仙台との運命的な出会い~

就労移行支援を利用して就職し、家具製作やオンラインショップ運営などの仕事を数年経験した本田さん。友人からの紹介でITスクール仙台と出会います。

「面接をさせていただいたときとかに、山松のほうから仙台で一番の事業所を作りたいっていう熱いお話を聞きまして、やっぱり私もやるからには一番を目指したいなっていう思いもあるし、そこに結構共感しまして一緒にやっていきたいなっていう思いがあって」

仙台で障害福祉の分野において「誰が見ても一番」の事業所を目指すという明確なビジョンに共感し、現在の職場での歩みが始まりました。

人見知りから「仕事モードスイッチ」の確立まで

支援する側に回った当初、本田さんは対人関係の仕事に苦労したといいます。もともと人見知りで、話すのが得意なタイプではなかった本田さんにとって、利用者の方々とのコミュニケーションは大きな挑戦でした。

転機となったのは、前職の上司からのアドバイスでした。「仕事をしている自分というのを演じるっていう感覚でやって、できるよ」という言葉から、本田さんは「仕事モードスイッチ」を確立。3ヶ月ほど経ってから「なんとなくできるかもな」と思えるようになったといいます。

最初の頃は帰宅後も1時間おきに目が覚める中途覚醒に悩まされ、「一回休んだらもう出なくなるな」という気持ちで這ってでも出勤していたという本田さん。それほどまでに真摯に仕事と向き合う姿勢が、現在の成長につながっています。

利用者の成長を間近で見る喜び

現在、仕事に楽しさとやりがいを感じているという本田さん。特に印象深いのは、利用者の方々の成長を目の当たりにする瞬間です。

「最初通い始めた時はもうずっとうつむいて、全然しゃべれなかった人とかも、くるりとどんどん明るくなっていって、誰よりもしゃべれるようになって卒業された方とかもいます」

本田さんが担当した利用者の中にも、最初は全然目も合わず、声をかけても「はい」しか答えなかった方が、少しずつ心を開いてくれるようになったケースがあります。毎日の関わりの中で信頼関係を築き、その方の抱える問題や課題を一緒に取り組んでいく過程で、だんだんと変化が現れてきました。

「すごい最後卒業するときに、ありがとうございましたみたいな形で言っていただいたりとかすると、すごい良かったなっていう感じがしますね」

利用者の方の人生において重要な就職という選択に携われること、そしてその人の成長していく姿を間近で見られることが、この仕事ならではのやりがいだと本田さんは語ります。

チームワークと成長を支える職場環境

ITスクール仙台の職場について、本田さんは「だいぶ明るい方」と表現します。世代も経験も様々なスタッフが、それぞれこの仕事をやる理由を持って働いており、「それが合わさって、大きなパワーになっている」と感じています。

職員同士でのフィードバックができる環境や、評価が明確に示されることで、自分のスキルアップやキャリアアップにも明確につなげていけるのが特徴です。仕事とプライベートのバランスも良く、みんなで出かけたり食事をしたりすることもありますが、強制ではなく各自の予定を優先できる環境が整っています。

「この仕事を私は始めるまで、仕事は生活するためのものみたいな、イメージが結構強くて」と振り返る本田さん。しかし現在は「楽しんで仕事をする」「みんなで共感しながらチームで仕事をする」ことの喜びを実感しています。

仙台で一番を目指して ~これからのビジョン~

本田さんの今後の目標は明確です。まずは仙台で一番の事業所になることを数字の面でも実現し、ITスクール仙台の良い雰囲気を今後増えていく店舗でも引き継いでいくことです。

「名実ともに仙台で一番、誰が見ても一番、福祉といえばITスクールだよねみたいな、ところになれるのを、やっぱり目指していきたいなと思いますね」

2拠点目の展開も控える中、本田さんが求める新しい仲間は、同じ目標に向かって進める人楽しんで問題解決できる人、そしてチームでしっかり協力できる人です。

迷っている方へのメッセージ

最後に、ITスクール仙台の利用を検討している方、そして一緒に働くことを考えている方に向けて、本田さんからメッセージをいただきました。

利用を検討されている方へ

「私も利用してた側からとしても言えるんですけれども、最初の一歩っていうのはめちゃくちゃ不安だし、怖いし、どうしようどうしようっていう気持ちもすごいわかるんですけど、そういう気持ちもわかってる私がいるよっていうところと」

「そんなに気負わずにというか、ちょっと相談しに行こうかなみたいな気軽な気持ちで一旦来ていただいて、一緒にその方の課題とかの解決に向けて一緒に考えていけると思うので、ぜひ一度勇気を出して踏み出してもらえたらなというふうに思いますね」

一緒に働くことを考えている方へ

「別に利用するしないに関わらず一回相談していただくのは嬉しいですし、また一緒に働いてみたいなって思ってくださってる方も同様に、やっぱり働かなくても関係なく一度説明を聞きに来ていただいて、私たちのビジョンだったりっていうのを共有して共感してくださる方と一緒に歩んでいけるといいんじゃないかなというふうに思ってます」

編集後記

取材を通じて感じたのは、本田さんの言葉一つ一つに込められた当事者としての実体験の重みでした。「震えながら電話した」という表現からは、当時の不安や恐怖が伝わってきます。しかし、そうした経験があるからこそ、今利用者の方々に寄り添うことができるのでしょう。

「私も不安が強くてなかなか動けなかったけど、こうして元気に生活してる皆さんも大丈夫だよっていう、なんとかの元気をお伝えしたい」という本田さんの言葉には、同じような悩みを抱える方々への温かい励ましが込められています。

仙台の障害福祉分野で「一番」を目指すITスクール仙台。そこで働く本田さんのような職員がいることで、多くの方々にとって心強い支援の場となっていることが印象的でした。一歩を踏み出すことの難しさを知っているからこそ、その一歩を支える力になれる。本田さんの歩みは、仙台で新たなチャレンジを考えている多くの方々にとって、大きな励みとなることでしょう。

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