吟遊詩人が紡ぐ「量より質」の働き方。女性9割のWebプロフェッショナル集団 株式会社トランバード 山川大輔社長インタビュー

今回は、Web制作から広告運用、コンサルティングまでをワンストップで手掛ける株式会社トランバードの代表取締役、山川大輔氏にお話を伺いました。

東京のIT最前線で活躍した後、仙台へ拠点を移し、現在はスタッフの9割が女性という独自の組織づくりを行っている山川社長。その背景にある想いや、仙台で描くビジョンについて語っていただきました

東京のIT最前線から、仙台へ。「吟遊詩人」が運ぶ情報と価値

――山川社長のこれまでの経歴と、起業の経緯について教えてください。

私は東京都出身で、モバオクやソフトバンクを経て、楽天市場の店長や集客責任者としてEC（電子商取引）の現場を経験しました。その後、東京のEC支援企業でSEOなどのプロジェクトに関わり、「もっと企業の想いを真っ直ぐに伝えるマーケティング支援がしたい」と考え、2014年に株式会社トランバードを設立しました。

――「トランバード」という社名には、どのような想いが込められているのでしょうか。

よく「鳥（バード）」と間違われるのですが、実は違うんです。
「輸送・経由」を意味する「Transit」と、「吟遊詩人」を意味する「Bard」を掛け合わせた造語です。吟遊詩人は、歌や詩で情報を各地に運ぶ存在ですよね。そこから転じて、「あなたの元へ情報を運ぶコンサルタント」という意味を込めました。コンサルタントという言葉は少し堅苦しいので、あえて「吟遊詩人」というニュアンスを持たせています。

――2018年に拠点を仙台に移されていますが、その理由は何だったのでしょうか。

東京では当時から少子高齢化による人材難が叫ばれていました。このまま東京にいても人材確保で苦労することが予想できたため、地方への進出を考えていたのです。
九州や北関東も検討しましたが、私が学生時代を仙台で過ごした縁もあり、土地勘のあるこの場所を選びました。

仙台に来て感じたのは、東京とのビジネススピードの違いや、働き方に対する意識のギャップでした。「自分にはできない」「知っているか知らないか」で委縮してしまう方が多かったのですが、逆に言えば、正しい知識と環境さえあれば大きく飛躍できるポテンシャルがあると感じました。

「量より質」の追求。短時間で高パフォーマンスを出す働き方

――御社の事業内容について教えてください。

Web制作、広告運用、企画、分析、コンサルティングまでをすべて自社で完結できるのが強みです。Web業界では、制作会社、広告代理店、コンサル会社と分業されていることが多いのですが、私たちはそれらをワンストップで提供できる、珍しい立ち位置の会社だと思います。

――仕事をする上で大切にされている考え方はありますか。

「量より質」です。
これは時間をかければいいものができるという考えではなく、限られた時間の中でいかに質の高いアウトプットを出せるか、という意味です。

弊社は女性スタッフが多く、子育て中のお母さんもたくさん働いています。お迎えの時間など、どうしても時間の制約がある中で、長時間労働で勝負することはできません。だからこそ、短い時間で通常の何倍ものパフォーマンスを発揮する「質」を重視しています。ダラダラと残業をするのではなく、密度濃く働く。それが弊社の文化ですね。

女性比率9割。未経験から「Webのプロ」を育てる組織

――スタッフの9割が女性とのことですが、どのような背景があるのでしょうか。

私自身の経験として、以前の職場で「優秀なのに時間の制約があるために評価されにくい女性」を多く見てきました。一方で、男性社会的な「長時間労働でなんとかする」スタイルには限界も感じていました。

女性はマルチタスクが得意な方が多く、限られた時間内でテキパキと成果を出す能力に長けていると感じます。実際に採用してみると、未経験の方でも環境さえ整えれば、驚くほどのスピードで成長し、プロフェッショナルな仕事をしてくれます。

――「EC運営代行」などのサービスも展開されていますね。

はい。一般的なコンサルティングは「こうすれば売れますよ」とアドバイスはくれますが、実際に手を動かすのはクライアント自身です。しかし、多くの企業は「何をすればいいか分からない」以前に、「やるための人手や技術がない」という課題を抱えています。

そこで私たちは、アドバイスだけでなく、商品登録やページ制作といった「実務の代行」までを請け負うサービス（EC運営のサブスク「アンドパトナ」）を展開しています。

EC運営のサブスク「アンドパトナ」：https://andpatona.com/

コンサルタントが言う「正論」を実現するための「手」を私たちが担うことで、クライアントの売上アップに貢献しています。

仙台から全国へ。誠実な人材とともに描く未来

――今後の展望について教えてください。

今後は、より高度なWebマーケティングやディレクションができる「プロフェッショナル」へと引き上げていきたいと考えています。
未経験からスタートしたスタッフたちが、月商数百万の店舗を数千万規模まで成長させる事例も出てきています。そうした成功体験を積み重ね、より付加価値の高いサービスを提供できる組織を目指します。

――最後に、読者へのメッセージをお願いします。

仙台には、誠実で真面目な方が多いと感じています。
「自分にはWebなんて難しそう」と思っている方でも、やる気と楽しむ気持ちさえあれば、必ず成長できる環境がここにはあります。

【取材後記】

「吟遊詩人」のごとく、東京で培ったノウハウを仙台へ運び、新たな雇用と価値を生み出している山川社長。
「量より質」という言葉の裏には、働くスタッフ一人ひとりの生活を尊重しながらも、プロとしての成長を信じる強い想いがありました。女性が活躍できるWeb企業として、仙台のビジネスシーンに新しい風を吹かせてくれそうです。