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INTERVIEW

アートが「仕事」になる場所 一番町から広がるインクルージョンのかたち |アート・インクルージョン・ファクトリー

仙台市青葉区一番町。街の喧騒の中に、一風変わった熱気を放つ場所があります。
そこは「アート・インクルージョン・ファクトリー」。
障がいのある方が働く「就労継続支援B型事業所」でありながら、その活動内容は既成概念にとらわれません。絵画、立体作品、音楽、ダンス、そして駄菓子屋まで――。

ここでは、利用者さんを「スタッフ」と呼び、彼ら一人ひとりの表現活動そのものが「仕事」として尊重されています。
「アートを通じて包括型(インクルージョン)社会の実現を目指す」という理念の裏側にある想いと、個性豊かなスタッフたちの活動について、サービス管理責任者の藤野朗子様にお話を伺いました。

アートが社会とつながる「きっかけ」になる

――まずは、「アート・インクルージョン・ファクトリー」がどのような場所なのか教えてください。

私たちは、アートを通じて「包括型社会(インクルージョン)」の実現を目指して活動している団体です。一番町に拠点を構え、就労継続支援B型事業所を運営しています。
ここでは事業所を利用される皆さんのことを「スタッフ」と呼んでいるのですが、スタッフは自身のアート作品を制作したり、ライブステージの練習をしたりと、それぞれの表現活動に取り組んでいます。

――立ち上げの経緯はどのようなものだったのでしょうか。

2010年に開催した「アート・インクルージョン in 長町」というイベントが全ての始まりです。「アートを通じて、いろいろな人が社会に関わるきっかけを作りたい」という想いでスタートしました。
その後、東日本大震災があり、復興支援活動などを経て、2013年に現在の「B型事業所 アート・インクルージョン・ファクトリー」を開所しました。

団体名にある「インクルージョン」には、皆で一緒に共生できる、安心して共にいられる、という想いが込められています。

「生きていること」そのものが表現活動

――スタッフの皆さんは、日中どのような活動をされているのですか?

基本的には、スタッフ一人ひとりの「好きなこと」や「やりたいこと」を最優先にしています。
アートというと、絵を描いたり何か形ある作品を作ったりすることを想像されると思いますが、形になってもならなくてもいいんです。

たとえ何もしなくても、その日々の「生きていること」自体が表現活動であると私たちは捉えています。ですので、私たち支援員(パートナー)は、スタッフの気持ちに寄り添うことを大切にしています。その結果として生まれたエッセンスが、作品として形になっているイメージですね。

――外部の先生を招いてのプログラムも充実していると伺いました。

はい。臨床美術士の先生によるアートの時間や、ヒップホップダンスの先生によるダンスレッスン、手話ソングの練習など、月に10回ほど様々なプログラムを実施しています。
また、制作された作品は月替わりで「Aiギャラリー」にて展示したり、外部のギャラリーで展示販売を行ったりしています。今年の夏には、スタッフ総出で制作した七夕飾りを一番町に飾り、全国から来られた多くの方に見ていただきました。

才能が爆発する、個性豊かなアーティストたち

――SNSなどを拝見すると、非常に個性的なスタッフさんが多い印象です。今の活動の様子や、注目のアーティストについて教えてください。

雰囲気はとても「ゆるゆる」としています。YouTubeやInstagramなどでスタッフの活動の様子などを発信していますが、見ていただくとわかる通り本当に多様な個性の人が集まっていますね。何名か紹介させてください。

まず、「アニマルアーティスト」として活動しているスタッフがいます。彼は粘土でいろんな動物やポケモンなどのキャラクターまで作るのですが、その精度が非常に高く、しかも10分〜15分という早さで完成させます。イベントでの実演販売では人だかりができるほどの人気で、固定ファンもついているんですよ。

「King Kさん」は、独特なタッチの女性画や風景画を描く方で、彼の作品をハンカチなどのグッズにすると大変人気があります。

――絵画や音楽だけにとどまらないのが面白いですね。

そうなんです。「ミッキーさん」は、Aiの「看板屋」さんです。イベントで売るわたがしの看板やステージの看板など、彼がデザインして作ってくれるんです。

さらにユニークなのが「たかピィさん」。彼は駄菓子屋が大好きで、かつて長町にあった「ハトヤ」という駄菓子屋さんに直談判して弟子入りした経験があるほどです。今は「たかピィ商店」として、イベントやお寺、児童館などに出張して駄菓子屋さんを開いています。「呼ばれればどこへでも行く」というスタンスで活動しているんですよ。

誰もが「一人じゃない」と思える社会へ

――最後に、アート・インクルージョンが目指す未来と、読者へのメッセージをお願いします。

インクルージョンという言葉には、広く社会とつながるという意味があります。誰かとつながるということは、自分は一人じゃないと思えること。そして、お互いに助け合えるということだと思います。
何かの影響で誰かを助けたり、助けられたり。そうやって影響し合いながら生きていける社会こそが、安心して暮らせる社会ではないでしょうか。

今後は、こうした個性豊かなアーティストたちの作品や活動を、もっと多くの人の目に触れる環境を作っていきたいと考えています。
一番町のギャラリーでは展示やイベント、ワークショップを随時開催しています。気負わずに、ふらっと遊びに来ていただけたら嬉しいです。スタッフ一同、お待ちしております。


【取材後記】
インタビュー中、藤野様が「生きていること、その日々が表現活動」と語った言葉が印象的でした。完成された作品の美しさだけでなく、そこに至るまでの「個」のあり方を丸ごと肯定する場所、それがアート・インクルージョン・ファクトリーなのだと感じました。
粘土細工の実演に、絵描き、看板職人、そして出張駄菓子屋。彼らの「好き」が仕事になり、社会と交わっていく様子は、まさに多様性が調和する未来の縮図のようです。
■取材協力
一般社団法人アート・インクルージョン
アート・インクルージョン・ファクトリー
住所:宮城県仙台市青葉区一番町3丁目8-14 スズキアバンティビル3F
公式サイト:https://art-in.org/
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杜の都散策ライター

はじめまして、「Voice Sendai」でWEBライターを務めるO.Wと申します。仙台生まれ仙台育ちの地元っ子として、杜の都の隠れた名店から四季折々の絶景スポットまで、地元ならではの視点でお届けしています。特に牛タンや笹かまぼこといった郷土料理から、定禅寺ストリートジャズフェスティバルや七夕まつりなどの伝統行事まで、仙台の食と文化に精通。幼い頃から読書が好きで培った文章力と、地元への深い愛着を組み合わせ、歴史的背景や文化的価値も交えた深みのある記事作りを心がけています。プライベートでは市内各所のカフェ巡りが趣味で、仙台のコーヒーシーンにも詳しいです。「Voice Sendai」では「地元民だからこそ知る仙台の魅力」をモットーに、観光客だけでなく地元の方にも新たな発見をお届けできるような記事を目指しています。仙台にお越しの際は、ぜひ私の記事を片手に街歩きを楽しんでください。

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