仙台を拠点に、CM、映画、ミュージックビデオなど幅広い映像作品を手掛ける「株式会社ハーモニー」。代表の中浜慎一氏は、単なる映像制作にとどまらず、障がいを持つ方々やマイノリティと呼ばれる人々と共にクリエイティブを作り上げるという、独自のビジネスモデルを展開しています。
「人生を謳歌する」をミッションに掲げ、映像業界の課題や社会的な課題に真っ向から向き合う中浜氏に、その背景にある想いや今後の展望についてお話を伺いました。
「人生を謳歌する」ために、共に創る
――まずは、株式会社ハーモニーの事業内容について教えてください。
現在、映像プロダクションとして4年目が経ち、5年目を迎えようとしています。主な事業内容は、CM、映画、ミュージックビデオなどの映像制作全般です。企画から撮影、編集までをワンストップで制作しています。
――御社のホームページには「人生を謳歌する」という力強いメッセージが掲げられています。これにはどのような想いが込められているのでしょうか。
これは会社としてのテーマでもあり、私自身の生き方のテーマでもあります。
弊社では、映像制作のプロセスにおいて、障がいを持った方々や、社会的にマイノリティとされる人々と共にクリエイティブを作り上げることを大切にしています。
一般のクライアントから受注した案件を、彼らと共にチームを組んで制作する。そうすることで、障がいを持つ方々にとっても社会との接点が生まれ、仕事を通じて対価を得ることができます。
彼らにとって外に出ることが難しい状況でも、映像編集などの内側の作業を通じて社会と繋がり、自分の能力を発揮できる。それが彼らにとっても、そして一緒に働く私たちにとっても「人生を謳歌する」ことに繋がると信じています。
業界の常識への疑問と、新たな可能性への気づき
――障がい者の方々と共に働くというスタイルに行き着いたきっかけは何だったのでしょうか?
もともと私は東京の制作会社で働いていましたが、映像業界はいわゆる「ブラック」な環境が常態化していました。長時間労働が当たり前で、体力勝負の世界。せっかく才能があっても辞めていく人が後を絶たず、人材が定着しないことにずっと疑問を感じていました。
そんな中、以前勤めていた会社で、あるプロジェクトをご一緒した友人がきっかけになりました。彼は左半身不随というハンディキャップを持っていたのですが、プロジェクションマッピングの制作において、驚異的な集中力とスキルを発揮したんです。
映像編集やVFX(特殊効果)のような作業は、必ずしも現場を走り回る体力が求められるわけではありません。むしろ、高い集中力や特定の分野へのこだわりといった特性が、クリエイティブにおいて大きな武器になることに気づかされました。
――なるほど。彼らの特性が映像制作の現場で活きると確信されたわけですね。
そうです。それに、今はYouTuberの台頭などで映像編集のハードルが下がり、誰でも動画を作れる時代です。そんな中でプロとして生き残っていくためには、ただ綺麗な映像を作るだけでは足りない。「社会的な意義」や「付加価値」が必要だと感じました。
障がい者の方々がクリエイティブの力で経済的に自立し、私たちも彼らの感性から刺激を受けて新しいものを作る。このWin-Winな関係性こそが、これからの時代に必要なビジネスモデルだと考えたのです。
挫折を経て見つけた、仙台からの再出発
――中浜代表は北海道の美大で造形を学ばれ、その後海外や東京での活動を経て仙台に戻られたそうですね。
はい。大学卒業後はカナダへ行ったり、東京でテレビ局や制作会社のADとして働いたりしました。東京時代は本当に過酷で、心身ともに限界を感じて仙台に戻ってきました。
その後、仙台で「東北一の映像プロダクション」を目指す会社に入ったのですが、そこでの経験も大きかったです。素晴らしい仕事をする一方で、組織として人を育てる難しさや、経営の厳しさを目の当たりにしました。最終的にその会社はなくなってしまったのですが、「自分ならもっと人を大切にする組織を作りたい」「ちゃんと利益を出して、みんなが幸せになれる仕組みを作りたい」という反骨心のようなものが、独立への原動力になりました。
――現在は映像制作以外にも、イベントの主催など多岐にわたる活動をされていますね。
そうですね。音楽やスポーツ、福祉関係のイベントなど、ジャンルを問わず様々な活動に関わっています。
以前、カナダにいた頃の経験も影響しているのですが、向こうでは多文化が共生していて、いろんなバックグラウンドを持つ人が自然に混ざり合っていました。仙台でも、イベントや「場」を作ることで、様々な人が交流し、そこから新しい何かが生まれるきっかけを作りたいと思っています。
昔運営していたカフェもそうでしたが、人が集まる場所からカルチャーや仕事が生まれる面白さを感じています。
クリエイティブで「稼げる」人を増やしたい
――最後に、今後の展望をお聞かせください。
クリエイターを増やしたいですね。障がいがあるとかないとかに関わらず、クリエイティブなスキルを持って、しっかりと自分の力で稼げる人を増やしていきたいです。
福祉的な側面での「支援」や企業のCSR活動の一環としてではなく、あくまで対等なビジネスとして成立させることが目標です。
例えば、「ヘラルボニー」さんのように、障がいのある作家のアートをビジネスとして成功させている事例があります。私たちも映像の分野で、彼らの感性や集中力を活かし、デザインや映像作品として高いクオリティのアウトプットを出し続けることで、「ハーモニーに頼めば面白いものができる」と評価されるようになりたい。
そうして生まれた利益を正当に分配し、関わる全ての人が豊かになれるような、持続可能なビジネスモデルを確立していきたいと考えています。
――本日は貴重なお話をありがとうございました。
取材協力
株式会社ハーモニー
映像制作(CM、映画、MVなど)、イベント企画・運営などを手掛ける。
「人生を謳歌する」をテーマに、多様な人々が活躍できるクリエイティブ環境を創出している。
公式HP:https://hrmn.co.jp

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